日本最大級のテクノロジー展示会「CEATEC 2025」では、AIと空間インターフェースを融合させた“体験型技術”が大きな注目を集めています。その中でも特に話題となったのが、三菱電機が開発した空中映像技術「Ciel Vision(シエルビジョン)」と、ソニーの「着るエアコン(REON POCKET)」です。
本記事では、この2つの技術を軸に、CEATECで見えた次世代AIの方向性と、私たちの生活がどのように変化していくのかを解説します。
CEATEC2025が描く「体験するAI」時代
CEATEC(シーテック)は、IT・エレクトロニクス業界の最新技術を紹介する展示会として知られています。2025年は「Innovation for All」をテーマに、AI・ロボティクス・モビリティ・スマートシティなど幅広い領域で未来の社会像を提示しました。
特に注目を集めたのが、単に「見る」展示から「体験する」展示への進化です。AIが人間の感覚や環境をリアルタイムに認識し、最適化する仕組みが各所で見られました。その代表格が三菱電機の「Ciel Vision」と、ウェアラブルAIとして注目の「着るエアコン」です。
三菱電機「Ciel Vision」――空中に映像を浮かび上がらせる未来技術
三菱電機が発表した「Ciel Vision」は、まるで空中に映像が浮かんでいるように見える新しい表示技術です。ディスプレイが存在しない空間に、リアルな3D映像を投影できる点が最大の特徴です。
この仕組みは、光の反射や屈折を高度に制御する独自の光学技術によって実現されており、特定の位置からは映像が立体的に見えるよう調整されています。さらにAIが視点を認識し、見る人の位置や距離に応じて映像を補正することで、まるで“そこに物体があるかのような”リアリティを体感できます。
例えば、空港や商業施設での案内サイン、車載ディスプレイ、ショールームでの製品紹介など、非接触で情報を提示する用途に期待が高まっています。
展示会場でも、まるでSF映画のワンシーンのような映像体験に来場者が足を止め、「これが未来のインターフェースだ」と話題になりました。
着るエアコン「REON POCKET」――AIが“快適”をコントロール
もう一つ注目を集めたのが、ソニーの「REON POCKET(レオンポケット)」に代表される“着るエアコン”です。小型冷却デバイスを首元に装着することで、AIが体温や外気温を自動制御し、最適な温度環境を提供します。
近年はスポーツメーカーや家電メーカーもこの分野に参入し、CEATEC2025ではより軽量でAI連動型の新モデルが展示されました。AIが利用者の体温変化・活動量・湿度を分析し、冷却・加温を自動で切り替える仕組みです。
特に2025年の夏の猛暑を受け、熱中症対策としての実用性にも注目が集まりました。単なるガジェットではなく、「AIによる身体拡張デバイス」としての進化が始まっています。
AIが“空間と身体”を理解する時代へ
「Ciel Vision」と「着るエアコン」に共通するのは、AIが“環境”と“人間”の双方を認識し、最適な体験を創り出すという点です。
従来のAIはスマートフォンやクラウド上で動く「デジタル的な存在」でした。しかし今後は、現実空間そのものがAIによって知能化される時代が訪れます。
- 空中映像によるインターフェース(Ciel Vision)
- ウェアラブルセンサーによる環境制御(REON POCKET)
- AIが統合的に判断し、最適な情報や温度を提示
これらが融合すると、「人間がデバイスを操作する」時代から、「AIが人を理解して支援する」時代へと変化していきます。
応用の可能性――ビジネスから日常生活まで
この種の“体験型AI技術”は、今後さまざまな分野に応用が期待されています。
1. 商業施設・観光分野
空中映像による案内サインやARガイドが普及すれば、非接触で直感的なナビゲーションが可能に。外国人観光客にも言語を超えた案内が提供できます。
2. 医療・福祉分野
ウェアラブルAIによる体温・心拍データの解析で、熱中症や体調変化を早期検知。高齢者の見守りやリハビリ支援にも応用できます。
3. エンターテインメント
空中映像とAIの組み合わせで、ライブイベントやスポーツ観戦がより没入的に。ファンが“そこにいる”ような体験を実現できます。
このように、「Ciel Vision」と「着るエアコン」は単なる製品を超え、AIと現実が融合する社会の入口を示しているのです。
CEATEC2025が示す未来:AIは“感じる”技術へ
AI技術はこれまで「考える」領域を得意としてきました。しかし今後は、「感じる」「応じる」「共存する」方向へと進化します。
CEATEC2025の展示を通して見えたのは、AIが人の感覚や空間情報を取り込み、生活を快適にする“感性インターフェース”の広がりです。
三菱電機のCiel Visionは「見る情報体験」を、ソニーの着るエアコンは「感じる身体体験」を変えつつあります。これらが融合すれば、私たちはデバイスを意識せずに、AIと共に生活する時代に突入するでしょう。
まとめ:AIと人間の境界が溶ける未来
CEATEC2025で見えたトレンドは、AIが人の外側ではなく“内側”に入り込み、環境そのものを知能化する方向にあります。
「Ciel Vision」が創る空間的な情報体験、そして「着るエアコン」がもたらす身体的な快適性。これらの融合は、生活・ビジネス・街づくりのあり方を大きく変える可能性を秘めています。
AIが空間を理解し、人間を支援する未来――その第一歩が、まさにCEATEC2025の会場から始まっているのです。
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