【日本のEV革命】デンソーが500km走行給電に成功!東京理科大の薄型コイルで加速する無線給電の未来

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【日本のEV革命】デンソーが500km走行給電に成功!東京理科大の薄型コイルで加速する無線給電の未来

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電気自動車(EV)の普及で避けて通れないのが「充電時間」と「航続距離」の課題です。これに対し、道路側のコイルから走行中の車両へ非接触で電力を送る走行中ワイヤレス給電が注目されています。日本では、デンソーが500キロメートルの連続運転に成功し、東京理科大学は給電を担う薄型コイルを開発。日本発の取り組みが実用段階へ加速しつつあります。本記事では、仕組みを基礎から解説し、今回の成果がどこに新規性と実利をもたらすのか、生活・産業・インフラの側面から詳しく見ていきます。導入に向けた課題やスケジュール感、よくある疑問にも答えます。
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1. 走行中ワイヤレス給電とは何か

走行中ワイヤレス給電は、道路に埋設した送電コイルと車両側の受電コイルの間で、非接触のまま電力をやり取りする仕組みです。代表的には磁界を用いた電力伝送で、コイル間の結合を最適化し、走行速度や車線位置の変動があっても安定的に受電できるよう制御します。

1-1. なぜ有線充電だけでは不十分なのか

  • 回生や効率化が進んでも、長距離用途や商用用途では充電停車が業務ロスになりやすい。
  • 都市部の集合住宅では自宅充電が難しく、公共充電インフラへの依存が高い。
  • 観光地や繁忙時間に充電待ちが発生すると回転率が低下する。

走行中給電は、これらのボトルネックを走りながら補電で薄め、結果として「バッテリーサイズを最適化」「停車充電回数の削減」「運行効率の改善」につなげる狙いがあります。

1-2. 基本構成

要素 役割 設置場所
送電コイル 道路から磁界を生成し電力を供給 車線の下、舗装層内
受電コイル 磁界から電力を取り出し車載バッテリーへ供給 車両フロア付近
電力制御 位置・速度に応じて給電制御、損失低減 路側・車載の双方
通信・課金 車両認証・メータリング・課金 路側(RSU等)と車載

2. 今回の国内トピック:500km成功と薄型コイル開発の要点

2-1. デンソーが500km連続運転に成功

デンソーは、走行中のワイヤレス給電を利用した連続運転で500キロメートルを達成しました。距離の大きさそのものより、重要なのは「走行条件の変動(速度・位置ズレ・車線内の揺らぎなど)に対するシステムの追従性」と「実運用を見据えた安定性を示した点」にあります。連続運転の検証は、個々の部品性能では見えにくい総合信頼性を可視化するうえで大きな意味を持ちます。

2-2. 東京理科大学が薄型コイルを開発

一方、東京理科大学は、給電を担うコイルの薄型化に成功。薄くできると車両側では「最低地上高への影響が小さく設置自由度が増す」「重量増を抑え電費悪化を避けやすい」「シャシー設計や改造範囲が狭まりコストに寄与」といった利点が期待できます。道路側でも舗装層との干渉が小さくなれば、施工性の向上や維持管理の容易化につながりやすく、長期的なライフサイクルコスト(LCC)低減に寄与し得ます。

ポイント:距離達成(運用信頼性の証左)と薄型化(適用範囲とコスト改善)は補完関係にあります。両輪が噛み合うほど、実装の現実味が高まります。

3. 技術的・実務的に何が優れているのか

3-1. 位置ずれ耐性と制御の安定性

実路では車両は常に理想位置を走れません。連続運転の成功は、一定の位置ずれや速度変動でも給電を継続できる制御・結合設計が成立していることを示唆します。これは導入時のドライバビリティや路面条件のばらつきに対する耐性の裏付けになります。

3-2. 薄型コイルによる設置自由度とパッケージング性

車体フロア付近はスペースが厳しい領域です。薄型コイルは車種間適合を取りやすく、OEM・サプライヤ双方にとって量産展開でのブレーキを下げます。道路側も舗装厚の制約に合わせやすく、既存道路改修や部分敷設のハードルを下げられます。

3-3. モジュール化による段階整備

走行中給電を全面敷設する必要はありません。交通量や必要性の高い区間をモジュールで優先整備し、都市部の幹線や物流動脈、バス専用レーンなどから段階的に展開できます。これにより投資の分割と効果検証のPDCAが回しやすくなります。

3-4. バッテリー最適化の余地

走行中に補電できるなら、車載バッテリー容量を過度に大きくしなくても所要の業務や移動を満たせる設計が取りやすくなります。重量とコストの面で合理化が進めば、市場価格やエネルギー効率の改善にも波及します。

4. どこで使うと効果が大きいか(活用シナリオ)

4-1. 物流・幹線道路

物流の定常ルート(港湾〜内陸拠点、工業団地間など)に部分敷設すれば、トラックの停車充電を削減できます。運行計画とエネルギー計画の一体最適が進み、車両回転率と時間当たり輸送量の改善が見込めます。

4-2. バス・タクシー・シャトル

決まった走行経路を持つ公共交通は相性が良好です。専用レーンや停留所前後の短区間敷設で、日中の運行を実質的に補電し続けることが可能になります。

4-3. 都市部のボトルネック解消

充電渋滞が起きやすい都心部では、幹線道路や立体交差進入部など、滞留しがちな区間に敷設することで渋滞時間を有効にエネルギー補給へ転換できます。

4-4. 観光地・レンタカー

観光ルートに沿って部分的に整備すれば、観光客は充電拠点を強く意識せずに移動しやすくなり、EVレンタルの利用体験が向上します。

4-5. 防災・非常時のモビリティ

発災時にエネルギー供給が寸断されても、発電拠点と接続した幹線の一部から最低限の移動・輸送を維持できます。可搬型電源と組み合わせた臨時給電も検討に値します。

5. 導入コストと整備モデルの考え方

道路への埋設設備は初期費用が大きくなる一方、運用段階での充電待ち時間の削減、車両のバッテリー適正化、運行効率改善などの運用メリットで相殺される可能性があります。費用対効果を可視化するには以下の視点が有効です。

  • 対象ルートの交通量・車種構成・滞在時間の実測
  • 部分敷設の設計(長距離のうち何%を敷設するか)
  • 施工・維持コストの試算(舗装更新周期と合わせる)
  • 運行KPI(稼働率・回転率・遅延率・荷役待ち時間)の改善幅
  • エネルギー原価と電力契約、再エネ比率の向上余地

方針としては「新設・大規模改良タイミングに合わせた敷設」「公共交通や物流の優先導入」「データに基づく段階投資」が現実的です。

6. 標準化・安全・法規のポイント

走行中給電は、電磁界の取り扱い、安全距離、漏洩、異物混入時の検知・停止など、設計段階から安全規格への適合が前提になります。さらに、課金・認証・通信の相互運用性がなければ利用者の利便性は上がりません。国内での法令適合(電波・道路占用・電気事業関連)や、国際標準との整合を並行して進める必要があります。

薄型コイルは車体側の最低地上高や衝突安全、車検制度との整合にも関係します。純正・アフターマーケット双方の展開を見据え、取付位置・保護構造・耐水・耐腐食・耐衝撃などの要件整理が求められます。

7. 普及までのロードマップ(仮説)

段階 期間の目安 主な内容 成功条件
実証強化 短期 500km級の信頼性確認を継続、薄型コイルの量産検討、限定区間での社会実装テスト 運用データの取得と公開、標準化の土台作り
限定商用 中期 バス専用レーンや物流幹線に部分敷設、課金・認証の運用開始 費用対効果の実証、自治体・事業者のスキーム確立
広域展開 中長期 都市圏主要ルートや観光動脈へ段階拡大、バッテリー最適化と連動 規格・法令の整備、運用保守モデルの成熟

注:期間は目安。技術成熟度・政策・市場環境により前後します。


8. よくある質問

Q1. 家庭用の普通充電器は不要になりますか。

完全に不要になるとは限りません。走行中給電は「補電」の役割も大きいため、夜間の計画充電や遠隔地での補充電手段は当面併存します。ただし、通勤や定常運行の多い車両では停車充電の頻度を減らせる可能性があります。

Q2. バッテリーを小さくできるのでしょうか。

ルートのどこでどれくらい給電できるかに依存します。部分敷設でも運用設計次第でピーク容量の最適化余地はあります。車種や用途ごとに最適解が異なります。

Q3. 電磁界の安全性は大丈夫ですか。

設計段階で安全規格に適合する必要があります。漏洩磁界や異物検出、感電・過熱対策などを含めた多層の保護設計が不可欠です。社会実装では継続的なモニタリングと第三者検証が重要になります。

Q4. 既存道路に後付け設置できますか。

舗装更新タイミングに合わせた埋設や、短区間の試験導入が現実的です。薄型コイルはこのとき施工性と維持管理性で優位に働く可能性があります。

Q5. どの分野から普及しますか。

効果を測定しやすいバス・物流・シャトルなど、経路が固定されKPIが明確な領域から始まりやすいと考えられます。

9. 参考情報

 

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